【ブルックリン発の日本文化施設】アート × カルチャーで目指す、国際交流の新しいカタチとは

こんにちは。HOTDOG TIMES 編集部、ライターの草島叶実です。

今回ご紹介するのは、ブルックリンにあるJ-COLLABOという施設。日本文化を日々発信する傍ら、ブルックリンと日本のアーティストを積極的にサポートしています。また、日本文化に興味をもつニューヨークの人々や、ニューヨークに住む日本人が集まって交流する、憩いの場にもなっています。

今回は、そんなJ-COLLABOを創設し、理事を務める佐賀関 等(さがせき・ひとし)さんにお話を伺いました。

きっかけ:趣味で始めたオンラインギャラリー

ーーまず、J-COLLABOを立ち上げたきっかけを教えてください。

もともと私は化粧品会社の宣伝部で働いていて、ニューヨークには駐在員として来ました。その駐在中に、仕事仲間と一緒に、趣味でオンラインのアートギャラリーを立ち上げたのが最初です。今でこそ、このように施設を構えている形になっていますが、2008年に立ち上げた当初はオンラインのみで活動していたんです。

ーー駐在中に立ち上げちゃったんですか!面白い始まりですね。そこから、ニューヨークでこの活動を続けていこうと思ったのはどうしてですか?

アメリカという場所に非常に興味があったんです。その化粧品会社がグローバル企業だったので、ニューヨークに来る前はヨーロッパにも駐在をしていたのですが、やはりアメリカの市場は規模が違う。本当に、世界の70億人を対象にモノがつくられていて、市場が動いている。それが面白いなと思って、もう少しアメリカに残ってビジネスをしたいと感じました。

もう一つの理由としては、思ったよりもオンラインギャラリーの活動が大きくなっちゃったこと。(笑) せっかくやってきて、ここで中途半端にやめるのももったいないなと。それで、駐在期間が終わって帰国したあと、すぐに会社を辞めてニューヨークに戻ってきました。

ーー立ち上げ当初のオンラインギャラリーは、具体的にどのようなものだったのでしょうか?

当初はJ-expoと呼ばれるオンラインの仮想ギャラリーのみの活動でした。主にフォトグラファー、デザイナー、メーキャップアーティストなどの作品を、オンラインコンテンツとして収集するにとどまっていましたね。

オンラインからの進展:イベントの開催、施設オープンへ

ーーそもそも、どうしてオンラインギャラリーを立ち上げようと思ったのでしょうか?

駐在経験を経て、アーティストの人たちがアメリカ・ニューヨークという移民の地で戦うためには、自国の文化を把握していないと話にならない、と思ったからです。これは、学生やビジネスマンにも言えるかもしれませんね。自国の文化を理解していないことには、そこから先、何も始まらないんです。それで、日本の文化を再考する、というテーマでギャラリーを始めることになりました。楽しみながらモノをつくって、日本の文化を学ぶきっかけになれば、という思いでしたね。

ーーウェブサイトを拝見しましたが、今ではギャラリーだけでなく、イベント開催の実績もたくさんありますよね。

そうですね。身内でしばらく続けるうちに、そのオンラインギャラリーが大きくなってきて、半年過ぎたあたりで日本の企業さんから「日本のイベントをやるのでコーディネートしてもらえないか」という依頼があったんです。

その頃オンラインギャラリーは、日本の「colors」をテーマに作っていたので、それを見てくださっての依頼でした。なので、そのまま「日本のいろ」をテーマにしたアートイベントをやらせていただいたんです。それが発端になって、日本をテーマにしたイベントもやるようになりました。

ーーそこから、どのような経緯で今のJ-COLLABOになったのでしょうか。

最初は小さいイベントをやっていたのが、それもまただんだん大きくなってきたころ、マンハッタンにビルを所有している方が現れて、その中の一室を私たちに使わせてくれることになったんです。私たちの活動を気に入ってくださって、「使ってないスペースがあるから」ということで。

それからしばらくして、現在私と一緒にJ-COLLABOの理事をしている下田幸知さんから、「今の場所は狭いから、ブルックリンにの大きいスペースに移転しないか」と提案がありました。それで、2014年から今の場所になった、というわけです。

多種多様なプロジェクト:実験的に進んできた道のり

ーーウェブサイトを拝見して、こんなにたくさん色々なことをされているんだな、とコンテンツの多さに驚きました。

ある意味、実験的なことを今までずっとやってきたような感じです。オンラインギャラリーもイベントも色々やってきましたが、これに特化したい、というようなものはなくて、流れに任せてここまで来ました。

この10年、活動の方向性を少しずつ変えながら、どうやったら一番いい形で効果的に浸透するか。そんなことを考えながらやってきて、今もまだ模索中ですね。

J-COLLABO プロジェクト一覧

[Artist Program]
会員登録制の一年間のアーティストプログラム。会員はJ-COLLABOにて開催されるグループ展への参加権利が与えられ、その中から投票でWinnerに選ばれた数名は、個展を開催することができる。
さらに、日本のアーティスト1名はJ-COLLABOで、ブルックリンのアーティスト1名は日本で個展を開くことができる。渡航する際の航空チケット代は無償で与えられる。

[イベント開催]
企業に依頼されたアートイベント、東日本大震災の復興支援イベント、グランドセントラル駅で開催されたJapan Weekでのパフォーマンスなど。中でも特に大規模だったのは、Discover J と題されたマルチメディアパフォーマンスのイベントで、約800人を動員する大イベントとなった。

[J + B Design]
アメリカ進出を目標にしている中小企業や地方自治体のための、テストマーケティングの場を提供。アメリカ市場に乗り込む前に試験的に商品の展示販売をし、商品紹介のイベントを開催することで、顧客の反応を知ることができる。

[インタビューシリーズ]
世界で”日本”をキーワードに活躍している様々なアーティストへのインタビューを連載。画家、書道家、写真家、人形劇の人形つかい、しっくいの左官など、幅広い多彩なジャンルのインタビューイーが揃う。なんと現首相の安倍晋三氏のインタビュー記事も動画と共に公開されていて、自身の著書「美しい国、日本」に基づいた内容になっている。

[J-Expo]
J-COLLABO立ち上げの発端となった、写真・グラフィック・映像などのオンラインコンテンツが集約されたギャラリー。第一弾の”Colors”に始まり、現在は計13のテーマに作品が分類されている。

[Brooklyn Beauty Fashion Labo]
ブルックリンの商品やブランドを、日本に広めようという試み。”日本→ブルックリン” という本来のJ-COLLABOの流れとは逆で、 “ブルックリン→日本” という、いわば対になるプロジェクト。カフェ、雑貨販売、ネイルサロンなど、様々な形でブルックリンのブランドを発信している。

参考動画はこちら↓

非営利団体としてのミッション:小規模・ローカルな活動をサポート

ーー施設を構えるようになり、イベントも頻繁に開催するようになったとのことですが、オンラインの頃と比べて運営のしかたはどのように変わりましたか?

じつは、J-COLLABOはニューヨークに認可された非営利団体なんです。つまり、あくまで利益目的ではないので、商売はできない。その代わりに、本当に色々な方々からの寄付とご協力で成り立っています。

例えば、ここにあるテーブルや椅子もすべて寄付していただいたものですし、アーティストプログラムのWinnerに贈られた航空券もディスカウントで譲っていただいたものです。

ーーなるほど、すごいですね。寄付だけでこれだけの活動ができるというのは、ニューヨークならではだと思います。

そうですね。すべてが寄付で成り立っているので、何らかの活動をサポートする、社会に貢献するというミッションがあるわけですが、”アーティストの活動を助ける”という土壌が、ここにはしっかりとあるので。ニューヨークでは、アート系の文化施設はほとんどが非営利団体です。

ーー具体的に、どのような社会貢献を目指していますか?

ひとつは、中小企業さんや地方自治体のプロモーションという形ですね。例えば、アメリカに進出したい日本の中小企業さんは、最初どうしたら分からない、というのがほとんど。そこで、テストマーケティングとして展示販売をする場をここで提供する。そうすると、こちらの顧客の反応を見ることができて、そこから改善点が見えてくるんです。日本人には丁度いいコーヒーカップでも、アメリカ人には小さすぎる、とか。(笑)

いきなりだとリスクが高いビジネスでも、色々な意見を聞くことで、何が求められているのかを把握できる。このテストの作業というのは、ものすごく大事ですね。

また、毎年9月中旬には、愛知県立芸術大学の学生さんが来てグループ展をします。昨年は和紙をテーマにして、和紙づくり体験などができるイベントでした。今年は、デザインの勉強をしている学生さんが来て展示会をする予定です。

ーーなるほど。主に小規模なビジネスや地方の活動を、積極的にアメリカの人たちに伝えているわけですね。

そうですね。日本のローカルの人たちと協力することで、彼らの活動をサポートしつつ、こちらの人たちが日本文化に興味を持つ入り口になればと思っています。

“一方通行から、双方向へ” ようやく見えてきた文化交流のビジョン

B+J Design の陳列棚。日本の商品とブルックリンブランドの商品が混じり合っている

ーー先日こちらの夏祭りのイベント(7/21)にうかがった時、日本人だけでなく地元のアメリカ人の方も多く来ていたのが印象的でした。

ブルックリンというのが、交流するのにとてもいい場所なんですよね。いい意味で田舎で、でもほどよく都会の要素もある。仮にこれがマンハッタンだと、たくさん人が来て良さげに見えますが、じつは回転が早いのでなかなか根付かないんです。

また、ブルックリンビューティーファッションラボというプロジェクトもあって、この施設の半分は、ブルックリンのブランド商品やアート作品のためのスペースになっています。そのため、日本文化をアメリカ人の方々に伝えると同時に、ブルックリンブランドのものを日本に伝えるための場にもなっているんです。

ーー”ブルックリンのものを日本に” という、逆方向の流れもあるわけですね。

今までは、”日本の文化を世界に!” って言って頑張っている人が多かった。”日本のものはきれいでしょ、すごいでしょ?” と一方的に紹介して終わりだったんです。ところが、今ここでやっているのは双方向の文化交流。日本の文化をブルックリンの人々に体験してもらうと同時に、ブルックリンのブランドを日本にも広めていく。

日本とブルックリンの文化がミックスしているおかげで、一方的に日本のものを紹介するだけだった時とは客層が変わって、リアクションも変わってきました。”一方通行”だと、来るお客さんがマンネリ化してしまう。日本に全く興味がない人にどうやって興味を持ってもらうか、ということを考えたとき、この両方のベースを踏まえたコラボレーションはとても効果的だと思いますね。

これからの展望:さらなる日米の交流を目指して

丁寧にインタビューに答えてくださった佐賀関さん

ーー今まで、とても幅広く様々な活動をされてきたわけですが、今後どのようにJ-COLLABOを発展させていきたいと思っていますか?

最初にJ-COLLABOを立ち上げてから10年経ち、今ようやく文化発信の手法が見つかったと思うので、ここからが本番ですね。先ほども言いましたが、今までの一方通行の発信から、双方向の文化交流を草の根運動のようにやっていく。これで最近やっと、ブルックリンの人たちとの共感を感じるようになりました。

ブルックリンという活動拠点と、この10年の”テスト期間”で学んだ手法を生かして、今後はカルチャーセンターのような形で、文化交流の場を広げていけたらと思っています。それに向けて、来春にはこの施設もリノベーションしますし、今年の11月には東京の新木場にも新たな施設をソフトオープンする予定です(※グランドオープンは来春)。日米を気軽に行き来できるような、国際交流のハードルを低くできるような場所をつくっていきたいですね。

ーーこれからまだまだ色んなことが起こりそうですね。私も楽しみにしています!ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。あと、インターンも随時募集中なので、そのことも書いていただけたら嬉しいです。(笑)

<インターン募集>

J-COLLABOでは、随時インターンを募集しています。

期間:基本的には半年間(要相談)
勤務回数:週1-2回以上 (自宅勤務も可。要相談)
業務内容:イベント企画、イベント運営、メディア運営など

給与はなしですが、このインターンでの活動を通して、ご自身の履歴書に書けるようなキャリアを作っていっていただければと思います。

日本文化をニューヨークで発信したい方や、国際的なネットワークを作りたい方、アートに興味のある方、ぜひご連絡ください。特に、アートマネジメント経験のある方やウェブデザインのできる方、大歓迎です。

連絡先:hsagaseki@gmail.com (佐賀関 等)

J-COLLABO
Website: https://www.j-collabo.org
Facebook: https://www.facebook.com/JCOLLABO/
所在地: 300 7th St, Brooklyn, NY 11215

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草島 叶実 (くさじま かなみ)  ニューヨークのPurchase Collegeでダンスを学ぶ大学生。ダンスやアートがもつ、言葉を超えたコミュニケーションの魅力を追求している。即興ダンスや、様々なジャンルのアーティストとのコラボが大好き。将来ニューヨークでプロのダンサーになるため、今できることは何でもするスタンス。

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草島 叶実 (くさじま かなみ)  ニューヨークのPurchase Collegeでダンスを学ぶ大学生。ダンスやアートがもつ、言葉を超えたコミュニケーションの魅力を追求している。即興ダンスや、様々なジャンルのアーティストとのコラボが大好き。将来ニューヨークでプロのダンサーになるため、今できることは何でもするスタンス。